Hütte on the moon.

いだてんぐの小説置き場です

ラーメン

ラーメンとはカメレオンである。

 

麺の細さから味、トッピング、ベースとなるスープの出汁の組み合わせでその姿を如何様にも変える。例えば同じ醤油ラーメンでも、店によってその味わいは全く別物と言ってもいいくらい異なるのだ。
「つまりそのラーメンにはそのお店でしか出会えない。もしお気に入りの一杯が見つかったのならそれは運命の出会いに他ならないのだよ。
特に最近のラーメンの多様性には眼を見張るものがある。醤油、味噌、塩、豚骨……そういったスタンダードなものから、なんと野菜をベースにしたラーメンや洋食の要素を取り入れたものなどもあると聞く。その無限とも言える種類の中から好みのものに出会えることは奇跡と言わずして何と言おうか!」
「エリス先輩、気持ちよく語っているところ申し訳ないですが、そのままだとラーメンが伸びちゃいますよ」
「兎月くん冷たい!」
今しがたまで得意げだった顔は途端に泣きそうなそれに変わる。

 

エリスのころころ変化する表情を見て、むしろ彼女の方がカメレオンなのではないかと、兎月は内心思うのだった。