Hütte on the moon.

いだてんぐの小説置き場です

2017-10-01から1ヶ月間の記事一覧

ハロウィン

「トリックオアトリートー!」いつの間にやらバレンタインやクリスマスと肩を並べるほどのイベントとなった10月31日。仮装した人々で溢れかえる街中をそのまま切り取ったように、魔導課もオレンジと黒で彩られていた。愛らしい蝙蝠やかぼちゃの装飾の中で猫…

愛の在り処

自身の求める愛なるものが那辺にあるのか、僕には凡そ見当もつかない。 誰にともなく僕がその呟きを空に投げると、少し離れたところに居た君は不意に振り向き悪戯っぽく笑った。「愛の在り処は此処ではない何処かではないのよ」ととと、と彼女は僕に向かって…

焼き芋

乾いた風、どこからともなく漂ってくる焚き火の匂い、色づいた木々。秋を感じさせるものは色々あるけれど。 「スーパーに焼き芋が並び始めると、秋!って感じするよね」銀杏の葉を踏みしめる2人の手の中には紙袋に包まれた温もり。今の時間に食べてしまうと…

武器

刃が月影を受けてぎらりと煌めいた。 「"眠れ"!」あやめのその声に促されるように魔力の源──聖骸は機能を停止する。その持ち主の男は悔しそうに唇を噛むと、懐に忍ばせていたバタフライナイフを手に彼女へ迫った。「くっ……!このぉ!舐めやがって!」キィン…

ネコ

それはどこまででも深く潜れそうなキトゥンブルー。 よたよたと頼りない足取りで白い毛玉が板張りの廊下を歩く。 一歩踏み出す度に、姉は歓声を上げた。 「可愛い!可愛いねえ、この子!」 「姉ちゃん、こいつが来てからそれしか言ってねえな」 「うるさい、…

金色の風はセンチメンタルを連れてくる。それは夏から遠ざかった故の冷たさをその身に纏っているからだろうか。ぴゅうと駆け抜ける北風に古都は思わずウイッグを押さえる。ちょっとやそっとでは取れはしないとわかっていても、やはりこういうときは少し怖い…