Hütte on the moon.

いだてんぐの小説置き場です

2018-01-01から1ヶ月間の記事一覧

ナイショ

「おばあさんはどうしてそんなにお耳が大きいの?」 山を下り、小屋の主人である老婆を食らってからどれほど経っただろう。最初は老婆の皮を被って、よく訪ねてくるという孫も食べてやろうと思っていた。はずなのに。「お前の声をよおく聞くためだよ」「おば…

いちご

それは陽の光に照らしたルビーのように、深く鮮やかな赤。 親戚からもらったからとバスケットから溢れんばかりのいちごを花重から受け取ったのはつい昨日のことだ。 『1人だと持て余しちゃうし食べて食べて!』と言われたはいいものの、そのまま食べるにして…

ケーキ

「ごめんね、2人とも。在庫処分みたいなことさせちゃって」クリスマス翌日の『パティスリーサリュ』。麻尋は顔の前でぱん、と手を合わせ娘のあやめとそのパートナーである古都に頭を下げる。「謝らないでください、麻尋さん!むしろケーキを頂けて嬉しいくら…

ショートケーキ

白いドレスに赤い王冠。煌びやかな装飾のないその佇まいが、かえって女王の風格を感じさせた。 あらゆるケーキが花を添えるクリスマス。ショーケースの中で出番を待つ彼女たちはどこか誇らしげで。その中でも一際輝きを放っているのは、シンプルなショートケ…