Hütte on the moon.

いだてんぐの小説置き場です

パーティーを抜け出して

挨拶回りばかりの退屈なパーティーなど、抜け出してしまえばいい。


「ちょ……古都!勝手に抜け出したら……」


みんなに心配かけちゃう。そう言いかけたあやめの唇を古都は人差し指で塞ぐ。


「ちょっとだけだし、大丈夫だって」


細い手首を軽く掴んで、彼はパーティー会場の端──バルコニーの陰に愛しい恋人を引き込む。


「それに、こんなに綺麗なあやめを放っておくなんてもったいない」


柱の影、2つの影が1つに重なる。人混み特有のざわつきがすぐ側で聞こえる。唇が離れた瞬間、あやめの顔はこれ以上ないほどに上気していた。


「……恥ずかしすぎて泣きそう?」


悪戯っぽく笑う古都が耳元で低く囁くものだから。


「もう……っ、とりあえず落ち着いて!誰か来るかもしれないし!」


あやめは照れ隠しに彼の腕を小突く。


人々はパーティーに夢中で自分たちのことなど意識の外だ。そうはわかってはいても恥ずかしいものは恥ずかしい。


夜風がひんやりと、彼女の熱を持った頰を撫でていった。