Hütte on the moon.

いだてんぐの小説置き場です

チョーカー

「ねえ、古都。これって変じゃないかなあ?」

 

桜色のカクテルドレスを身に付けたあやめは、裾をつまんでその場でくるりと回る。Aラインのシルエットがゆらゆらとひらめいた。
「ん、よく似合ってるよ」
古都はネクタイを軽く締め直し、目線をあやめの方に向けるとゆるりと笑う。
この日は各国の魔術師が集う交流会。魔術世界の秩序たる対魔局魔導課の隊長と副隊長である2人はゲストとして招待されていた。
「本当?よかったー。こういう格好ってあんまりしないからちょっと不安だったんだ」
「それは俺もだよ、正装って機会がないとなかなかする機会ないよな」
そうだ、あやめ。目を閉じて。
古都に促されるままあやめが目蓋を下ろすと、ひやりとした感触。驚いて目を開けると、鏡に映った彼女の首では薔薇があしらわれたチョーカーが揺れていた。
「オレからのプレゼント」
不意にうなじに落とされた唇に、あやめの心臓がとくんと跳ねる。

 

その頰は首元に咲く一輪の花のように紅く染まっていた。