Hütte on the moon.

いだてんぐの小説置き場です

琥珀糖びより設定

琥珀糖庵(Kohakutou-an)
魔法のお菓子屋。世界の美しいところを切り取って、それをお菓子に変えることのできる魔法使い「糖蜜 琥珀」が主人。
星屑の金平糖、波がさざめく水飴、地平線のチョコレート、恋を凝縮したドライフルーツ、入道雲の綿飴、大樹のバウムクーヘン、夕焼けのゼリー、紅葉のメイプルシロップ……。
その不思議な菓子の数々は、食べた人間に希望を与えると実しやかに噂される。
しかし魔法使いにとってこれらの菓子はただの嗜好品の域を出ない(人間のように希望を与えられることはない)。

 

糖蜜 琥珀(Toumitsu Kohaku)
あらゆる美しいものをお菓子に変える能力の持ち主で、琥珀糖庵の主人。自分の作る菓子が人間に希望を与えるものだということは理解しており、それ故いたずらに人間界へばら撒くことは好まない。普段は人払いの魔法をかけた店舗で、魔法使いを相手に商売をしている。
綺羅崎あやとが琥珀糖庵の菓子で希望を得たことは既に知っていて、運命を捻じ曲げてしまったことに罪悪感を抱いている。しかしそれと同時に人間臭く生きようと足掻く彼を興味深く思っており、その行く先を見てみたいという好奇心から自らを探す彼を琥珀糖庵へ導いた。あやとに対しては前述のように複雑な感情を抱いている。
持って回ったような回りくどい言い方を好み、比喩表現をよく用いるのが癖。マイペースだが、どこか超然としている。

「貴方がどう思おうと勝手だけれど……私のお菓子はパンドラの箱よ。希望なんていう眩い光に気を取られて、絶望という深淵を見失ってしまう。気がついたときには暗闇に囚われている──なんてこともあるかもしれないわね」
「あら、綺羅崎くん。なあに?報告?ミルクティーを飲んでからにしましょうよ。ちょうど天の川のミルクが手に入ったの」

 

綺羅崎 あやと(Kirasaki Ayato)
かつて生きる気力を失い、行方を晦まそうとした男子高校生。失踪しようとした直前にある魔法使いに出会い、そのとき琥珀糖庵のお菓子を口にする。星屑の金平糖を食べた彼は、以前までとは打って変わって生に貪欲になる。
自分の命を救った菓子を作った魔法使いを探していた最中、琥珀の導きにより琥珀糖庵に辿り着く。以後、琥珀の計らいで琥珀糖庵に立ち入ることができるようになった。
皮肉屋でマイナス思考、厭世的で世の中を斜に見る性格から精神的に摩耗しやすく、そのために生きようとするエネルギーを失くしていた。魔法の菓子に与えられた希望によって今の自分が成り立っていることについては、自分が塗り替えられたような不思議な感覚を抱きながらも命を救われたことを素直に感謝している。

琥珀さんが何と言おうと、俺はこのお菓子に救われたんだ。その恩返しをしたい、例えそれが仮初めの希望に拠るものでも」
「あーもう……めんどくさいことになっちまったなあ……とりあえず、琥珀さんに報告報告、っと」

 

糖蜜 楓(Toumitsu Kaede)
琥珀の弟。夕焼けで紅葉を染める魔法の使い手。その魔法の性質から、秋になると世界中を駆け回っている。
琥珀曰く、「楓が染めた紅葉で作るメイプルシロップが一番美味しい」とのこと。姉弟仲は良好で、楓はその年で一番綺麗に染まった紅葉を毎年琥珀に贈り、琥珀はそれで作ったメイプルシロップを贈る。
性格は生真面目でいつも敬語。魔法の菓子を食べたあやとに対しては、希望というまやかしで運命を変えられてしまった哀れな少年と思っている。

「こんにちは、僕の名前は糖蜜楓。琥珀の弟です。そうですか、貴方が……琥珀糖庵のお菓子を食べたという人間ですか」
「希望なんていいものじゃないですよ。届くかどうかもわからない星を見上げて何になるというんです?ましてそれで自分の意思を曲げられるなんて」