Hütte on the moon.

いだてんぐの小説置き場です

夕焼けを切り取ったようなミネストローネ

給されたのは、深い皿を並々と満たす夕焼け。

 

スプーンで一掬いすればそこは広大な畑。


太陽の光を体いっぱいに浴びて青々と育った作物たち。


口に含むと角切りにされたそれらが口の中で解ける。


素材が持つ本来の甘みを引き出すように計算された塩味は
まるで寄せては返す波のようにさっと舌の上から消えていく。

 

目蓋の裏に映るのは、いつか祖母の家で見た光景。


彼方此方から漂ってくる夕食の匂い。


日が沈むまで泥だらけで遊んだ、あの日の夕暮れ。


祖母が呼ぶ声に一抹の寂しさを覚えながら


友達とさようならをした、あの頃。

 

目を開けるとそこは白で統一されたレストラン。


けれどミネストローネは、変わらず夕焼けを湛えていた。