Hütte on the moon.

いだてんぐの小説置き場です

モノクロ 2つ目

耳慣れた流行のメロディを白黒の凹凸でなぞる。


絶対音感があるからといって世界が色づいて見えるわけではない。

むしろ雑音が多すぎて黒く塗り潰されたキャンバスのようだ。

どんなに鮮やかな色でも、 何色も何色も混ぜ合わせれば漆黒になるように。


僕にとっての世界は白黒だ。

何もないか、ありすぎるかのどちらか。

あるとすればそれは濃淡。

僕が捉えられるのはモノクロ写真のような

あるいは水墨画のような

白と黒と灰色で出来上がった景観。


けれど、何故だろう。

君と出会ったとき視界が色彩で溢れた。

君の笑い声が、鼻歌が、

僕のモノクロに色を付けていく。


色付いた世界の中で僕は君に手を伸ばす。

嗚呼、

世界はこんなに綺麗なんだと

僕はそのとき初めて知ったんだ。