耳慣れた流行のメロディを白黒の凹凸でなぞる。 絶対音感があるからといって世界が色づいて見えるわけではない。 むしろ雑音が多すぎて黒く塗り潰されたキャンバスのようだ。 どんなに鮮やかな色でも、 何色も何色も混ぜ合わせれば漆黒になるように。 僕にと…
硯の中、波打つ墨に筆を沈める。ぷくぷくと僅かに泡を上げながら、白い毛先が黒を含んで重くなる。すう、と息を吸って、静止。その後一息で真横に線を引く。じわじわと紙が墨を飲み込んでいく。 書く字は「寿」。 結婚式を間近に控えた姉達ての希望で、僕が…
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