Hütte on the moon.

いだてんぐの小説置き場です

ドレス

レタスのフリル、キャベツのパニエ。

 

今日の私はお姫様。
緑のドレスをこの身に纏って、
テーブルクロスの上を華麗に舞うの。
降り注ぐクルトンとパルメザンチーズの雪。
トマトの口紅を引いたら
フォーク王子にこんにちは。
手を引かれるまま連れ出されたのは
陶器のお皿という大舞台。
踊りましょう、踊りましょう。
暖色灯のスポットライト、
舞台の上には二人きり。
どうかこの時間が永遠に続くようにと願うけれど、
所詮これは一夜の夢。
シンデレラの魔法が12時で解けてしまうように。

 

ふわりと自分の身体が抱き上げられて、宙に浮かぶ
ああ、そのときが来てしまったのだと
私はどこか他人事のように思う。
フォーク王子にさようなら。
緑のドレスを翻して、
私は世界に別れを告げる。

 

裾をつまんでゆるりと一礼。
色鮮やかな私の身体は深淵へと飲み込まれた。